一日目


 あるアーチストのコンサートを観るため、ガンモと二人で名古屋に出かけた。これまで、名古屋に行くときはいつも新幹線を利用していたのだが、たまには近鉄特急というものを利用してみようと思い、行きも帰りも近鉄アーバンライナーを予約した。

 近鉄難波を朝9時ちょうどに出発し、およそ2時間かかって近鉄名古屋に到着した。新幹線だと新大阪からおよそ1時間で着いてしまう。新幹線に慣れているせいか、近鉄特急の走るスピードがひどくのろいものに思えて仕方なかった。
 また、我が家から難波まで出るためには、途中で電車を乗り換えなければならず、時間と手間の両面から見ても、近鉄特急は私たちにとっては非常に不便な交通手段だった。
 おまけに、私たちの席の近くに陽気な四人組の旅行者がどやどやとやって来て、座席の向きを変えて向かい合わせに座っておしゃべりを始めたため、何となくプライバシーを侵害されているような気がして、名古屋到着まで落ち着かなかった。

 名古屋に着いてすぐにホテルに荷物を預け、チェックインの手続きを済ませた。そして、ひつまぶしを食べるために、名古屋から桜通線に乗り、久屋大通で名城線に乗り換え、伝馬町で降りた。目指すは、熱田神宮の近くにある蓬莱軒である。こちらは、いつも掲示板等でお世話になっているshisyunさんのお勧めのお店である。

 ガイドブックやネットで場所を調べて行ったのだが、少々道に迷ってしまった。ようやく見つけたとき、「あつた蓬莱軒」という看板が見えて来てホッとしたので、「やはり、みんな場所を探しながら歩いて来て、迷いながらようやく見つけるから『あった』とわざわざ書いてくれているんだろうなぁ」などと思っていた。しかし、のちにこれは「あった」ではなく「あつた」、すなわち「熱田」であることに気づく。

 お昼どきだったのだが、まだそれほど混雑はしていないようだった。お店に入ると、テーブル席が良いか、お座敷が良いかと尋ねられたので、迷わずお座敷と答えると、二階に上がるよう、案内された。

 二階のお座敷は、広間の中にいくつものテーブルがあり、既に半分以上のテーブルが埋まっていた。和服の作業服を着た店員さんがメニューを持って来てくれる。私たちは迷わずひつまぶしを二つ注文した。

 やって来たひつまぶしはご覧の通り。今思い出してもよだれが出るくらいおいしかった。ぷりぷりしたうなぎにふっくらしたご飯。たっぷりのねぎと、上品なわさび、そして山盛りのきざみ海苔。お櫃に入ったひつまぶしは、お茶碗にたっぷり三杯分はある。こんなに食べて大丈夫なのだろうかと思いつつも、shisyunさんに教えていただいた通り、一杯目はそのままいただき、二杯目は薬味を乗せていただいた。薬味のわさびは、お寿司についているようなわさびではなく、つんと来ない上等なわさびだった。
 しかし、最も心配だったのは、お茶をかけて食べるということ。うなぎご飯にお茶をかけて食べることなど私にできるのだろうか? と、とても心配だったのだ。
 いよいよ三杯目になり、お店の人が置いて行ってくれた土瓶に恐る恐る手を伸ばす。本当にこれをかけて食べるのだろうか? と最後まで不安だったのだが、驚いたことに、これがうなぎと妙にマッチした味で、思いのほかおいしかった。土瓶の中をこっそりのぞいてみたのだが、透明なお湯のようなものが入っていた。あれは出し汁だったのだろうか?

 おそらく、この三度の味わい方は、量の多いひつまぶしを、飽きないで食べてもらうための工夫なのだろう。食べ終わったあとはもう興奮状態で、しばらくは他の食べ物が喉に通らないだろうと思った。

 帰りに伝馬町駅まで歩いていたら、BOOK OFFの看板を見つけてしまった。しかし、この先のことを考えると、時間的な余裕がなく、寄ることができなかった。どうせBOOK OFFに行くなら、気合を入れてゆっくり見たかったからである。

 伝馬町駅から再び名城線に乗り、上前津駅で降り、そこから鶴舞線に乗り換え、大須観音駅で降りた。毎月二十八日に行われている大須観音骨董市に出かけるためである。伝馬町のBOOK OFFに寄ることができなかったのは、この骨董市のせいである。骨董市は、朝早くから開催されているものの、早いお店だと午後3時頃からお店をたたんでしまうからである。

 私たちは名古屋に来ると、たいてい大須に来てたくさんの買い物をする。大須観音は単にいつも通り過ぎるだけだったのだが、骨董市の開催日である今日は、たくさんのお店と人で賑わっていた。

 私たちの好きなカメラを扱うお店もたくさん出ていてたので物色して回っていると、突然声をかけられた。何と、東京カメラ倶楽部でご一緒しているAさんだと言う。Aさんは名古屋にお住まいだそうで、東京カメラ倶楽部の忘年会で私たちを見かけたのを覚えていてくださったようだ。
 余談になるが、以前、大須に来たときもパソコン通信のカメラ仲間であるKさんに声をかけていただいた。Kさんは私たちのホームページをご覧になり、「ガンモ&まるみさんでしょうか?」と声をかけてくださったのだ。どこで誰に会えるかわからないが、こうして声をかけていただくのはうれしいものである。

 骨董市に満足したので、大須の商店街を練り歩く。当然、コメ兵にも足を運び、カメラをチェックする。ずっと以前から高性能のデジカメが欲しいのだが、なかなか満足するスペックのカメラがない。

 コメ兵をあとにすると、いよいよガンモのパソコンパーツ購入タイムとなる。大須界隈は、東京で言えば秋葉原、大阪で言えば日本橋のような感じで、たくさんのパソコンショップが立ち並んでいる。ガンモがパソコンショップを回っている間、私は店先のパソコンでインターネットを楽しんだりしている。これから向かうセンチュリーホールの交通手段も、店先のインターネットで調べた。

 夕方5時半頃、大須を後にし、上前津駅から再び名城線に乗って西高蔵で降りる。そこから歩いて5分のところにセンチュリーホールはある。辺りはすっかり暗くなっていた。
 ここでライブを楽しんだあと、帰りは名城線で栄まで出て、栄から東山線に乗り換えた。地下鉄を降りてすぐのお店できしめんを食べる。ひつまぶしのおいしさをひきずっていたわけではなかったのだが、おなかがすいていたにもかかわらず、あまりおいしくなかった。醤油だしだったからだろうか? 関西風の味に慣れると、だし汁の色が醤油色をしているだけで敬遠したくなってしまうのである。前にJR名古屋駅の構内で食べたきしめんはおいしかったのに、残念である。

 宿泊したホテルは、各部屋にLANのコンセントがあり、インターネットに繋ぎ放題といううれしい特典付きだった。快適なインターネット環境を得て、旅の疲れも忘れてのめり込む。そして、就寝。