マンガ喫茶
大変お恥ずかしい話だが、私はほとんどマンガというものを読まずに育って来た。私が真剣にマンガを読んでいたのはせいぜい小学生までで、真剣と言っても、当時習っていたピアノ教室の待合室に置いてあった少女マンガに夢中になった程度である。その後は、中学生のある時期まで、付録目当てに「なかよし」や「りぼん」を購読していたくらいだ。実は、マンガが好きになれなかったというわけではない。前置きが長くなるが、私とマンガには、ちょっとした苦い思い出があるのだ。
私が中学校に上がった頃、実家が新築された。あれは、税金の計算をするためだったのだろうか。税務署の人が家の様子を見に来たのだが、引っ越したばかりの自分の部屋で、私は友達にもらった古本を、まるでベッドのように敷き詰めて横になっていたのだ。税務署の人は、私のマンガ本のベッドを見てせせら笑った。そのときのことが傷になり、私はもうマンガなど読むまいと心に誓ったのだった。
実は、私は今でもマンガがものすごく好きというわけではない。どちらかと言うとマンガよりも文章を読むほうが好きである。そういうわけなので、これまでマンガ喫茶らしいマンガ喫茶には入ったことがなかったのだ。(ランチを食べるためだけに、マンガ喫茶らしい雰囲気のお店に入ったことはある。)
今回、私をマンガ喫茶に案内してくれたのは、私を村上春樹ワールドに案内してくれた、例の彼女である。彼女とのやりとりは、以前村上春樹掲示板にも書いたことがあるが、同じ職場で働いていたときに、トイレに備え付けられている棚を使って、本の貸し借りをしていた。その中にはマンガもあったし、小説もあった。このやりとりは、本当に面白かった。小説やマンガの世界は非常に幅広いので、知り合った相手が必ずしも自分と同じ範疇の本を読んでいるとは限らない。これは音楽に関しても言えることだ。そういう意味においても、彼女との出会いは大変貴重なものだと言える。
さて、そのマンガ喫茶は、三宮駅前のとあるビルの3Fにあった。インターネットも楽しめるようだったが、インターネットは自宅でも楽しめるので今回はパスした。1時間380円で、ドリンクは飲み放題となっている。延長は、30分につき150円。
そのマンガ喫茶には、カップルのために、二人掛けのシートのボックス席が用意されていた。私たちは、係の人に案内されて大笑いしてしまう。何だか恥ずかしいのだ。私たちの気持ちを察してか、係の人がこう言った。
「こちらのお席は、女性だけのお客さまにも、広くご利用いただいておりますので。」
それを聞いて、ちょっと安心する。しかし、こんなラブラブシートに女性が二人、身体を埋めてマンガを読むのは、いくら親しい仲でもちょっぴり恥ずかしい。(^^; ちなみに、ボックス席の周りは、狭いカラオケボックスのようになっていた。
それから2時間、私たちは5冊ほどマンガを選んで、ひたすら読むことだけに熱中した。私はマンガを読むとなると、ホラーものについ手が伸びてしまう。しかし、ホラーものばかりではバランスが取れないので、思わず泣いてしまうような恋愛ものを一冊入れておいた。
あっという間の2時間だったが、私はマンガ喫茶というものが非常に気に入った。別にマンガなど読まなくても良い。お金を払って、飲み物付きの図書館で勉強していると思えば良いのだ。そこには、自分だけの時間がある。考え事をするにもいいだろう。何だかはまってしまいそうな予感がする。