さようならビックリカー
ビックリカーは、ここのところ調子が悪く、特に遠出をすると不調になることが続いたため、私たちはとうとうビックリカーを手放す決意を固めた。
ビックリカーの代わりの車は既に中古で購入していた。当初はビックリカーとビックリカーの代わりの車の2台を2年ほど所有するつもりでいたのだが、我が家ではガンモしか運転免許を持っていないことと、マニュアル車とオートマ車を交互に乗り換えて運転することは難しいという理由から、予定より早くビックリカーを手放すことにしたのだった。
ビックリカーとの別れは実にあっけなかった。まず、解体屋に持って行く前に、ビックリカーで使用していた小物をすべて運び出し、エンブレムと配線を外した。
すっかり身軽になったビックリカーをガンモが運転し、解体屋へと向かった。ところが、ビックリカーの最期のあがきだったのだろうか。解体屋に到着するまでに随分道に迷ってしまった。ガンモの神経もぴりぴりしているようで、ビックリカーを手放すやりきれない気持ちが、助手席に乗っている私にも伝わって来た。
ようやく解体屋に到着し、事務手続きを済ませたあと、陸運局に返却するため、ナンバープレートを外した。
身ぐるみはがれたビックリカーは、またたく間に解体屋の手に渡った。その後ろ姿はとても寂しく、私たちに何かをうったえているかのようだった。ガンモはその後ろ姿にはほとんど目を向けず、解体屋からすぐに立ち去ろうとした。ガンモの手にはしっかりと、ビックリカーの遺影がにぎられていた。
その夜、布団の中で私たちはビックリカーについていろいろ語り合った。ガンモはビックリカーは鉄になって新しい車に再生するのだと言った。私はガンモの前向きな考えに感動したのだった。